遺言執行者の銀行口座がつくれない―相続・遺言
今回は銀行口座の新規開設についてのコラムです。
近年、マネーロンダリング防止のために金融機関での口座開設が難しくなっています。
それに加え、次のような動きがあります。
1. コロナ感染予防を目的として銀行等の出勤人数が減り
2. 店内に入る顧客の数を制限し
3. コスト削減のために一括して専門部門で事務作業を行う
4. そのため、支店に知識のある従業員は不要になっている
5. 一般的な出入金等以外は予約制であり、予約は1か月先しか取れない
今月、当事務所で公正証書遺言をお作りになったクライアントが他界なさいました。
その公正証書遺言の中で私が遺言執行者に指定されていましたので、相続人から知らせを受け、まずは亡くなった方の口座のあった銀行支店で遺言執行者の口座を新規開設する手配をしました。
・・・これが大変な苦労です。
だいたいの都市銀、信用金庫であれば「相続センター」等の名称の部門の連絡先が公開されているのですが、某都市銀は支店窓口とのやり取りだけで開設しなくてはなりません。
支店の担当者は遺言相続に関する知識が不要になっているようで、都市銀行であっても「遺言執行者」「公正証書」という単語がわからない。
“相続手続きの担当者”というプロのはずの口から「ゆいごんしっこうにん」という言葉が出てきたときに「これでは無理だ」と驚きました。
名前の欄は亡くなった方、住所は相続人代表者など、手続きする人は遺言執行者など、用紙1枚に雑多な情報をまぜこんだ記載を指示されましたが、士業が遺言執行者の手続きを都市銀では膨大な件数を扱っているのではないでしょうか。
相続用の残高証明の申請も、例えば、2007年に民営化された銀行では“相続手続きの担当者”が「公正証書」という単語を初めて聞いた様子でした。
驚きました。
とはいえ、不正な財産の流れを防止することは非常に重要で、ITの発達により銀行員の職務も変化してきています。
知人が就職を機に銀行口座を開設しようとしたところ大変な手続きだったという事ですから、世の流れでしょうか。
遺言執行は大きな金額、不動産等を対象とするため慎重の上にも慎重を期さなくてはなりません。
さいきん注目されている信託も、信託口口座(もどき、ではない倒産隔離機能のある口座)を開設できる金融機関はまだ少ないのが現状です。
遺された相続人、御家族みなさまも御高齢であることが当たり前になった現代では士業が手続きをする必要も高まります。
実務との兼合いを研鑽してまいります。
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