一人法務 総務 総務法務を応援―5― 改正消費者契約法

消費者契約法の一部改正 前編 【企業の立場から】

平成30年6月15日公布の消費者契約法の改正法が
本年(令和1年)6月15日に施行されます。
平成28年にも改正が行われていますが、さらに消費者保護の目的で行われるものです。
 悪徳セールスが巧妙になる、高齢者が狙われやすい、などの傾向が
この数年続いていることもありますが、
2022年からの民法改正による成年年齢の引き下げも関連しているのではないでしょうか。
成年が18歳になり親権者の同意なしに自分で有効に契約を締結することが可能になり、
未成年者の取消権も無くなります。
その結果、悪徳業者からターゲットにされやすいという懸念があります。

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消費者契約法の一部改正 前編 【企業の立場から】

【企業サイドでは、何を理解しておく必要があるか】

 悪徳セールスをしているような企業はさておき、
正当な事業を運営している企業でもB to C事業であれば
改正法を理解し、改正後に使う定型契約書や規約の内容を見直しておきましょう。

(1) 無効になる不当条項

現行法ではただちに無効にはならない、
「事業者が自らの責任を決める”お手盛り条項”」が無効になります。
例としては、
「事業者が損害賠償責任を負う場合でも、
事業者が自らに過失があると認めた場合に限り損害賠償責任を負う。」
「~~~の場合において、事業者が消費者に解除権があると認めた場合に限り解除できる。」
など、上記の例文では、
事業者の責任や消費者の保有する解除権行使を、
事業者の判断で恣意的に決めることができるため、
今回の改正では無効である旨が明示されます。
■改正法第8条、第8条の2

 

(2) 消費者の後見等開始の審判を理由とする契約解除条項

  消費者が後見等(成年後見・補佐・補助)開始の審判を受けたことだけを理由にして、
事業者が解除権を得ることを決めた条項は、
無効です。
契約書では解除の条項で定型文を入れていることが多いため、
この点に留意して見直しを行いましょう。
■改正法第8条の3
※但し、消費者が事業者に対し役務を提供する契約は除かれます。
■民法653条3号(委任の終了)、656条(準委任)

 

(3) 事業者の努力義務

現在でも規定されている事業者の努力義務の部分が改正されます。
■改正法第3条1号
「事業者は、次に掲げる措置を講ずるよう努めなければならない。」
「1号 消費者契約の条項を定めるに当たっては、
消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が、
その解釈について疑義が生じない明確なもので、
かつ、消費者にとって平易なものになるよう配慮すること。」
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同様に情報提供についても改正されます。
■改正法第3条2号
「2号 消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、
消費者の理解を深めるために、
物品、権利、役務その他の消費者契約の目的となるものの性質に応じ、
個々の消費者の知識及び経験を考慮した上で、
消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供すること。」

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民法改正だけに目が向きやすい時期ですが、
自社の事業に関連する法やルールを常に意識しておくことが
会社を守ることにつながります。

契約書や規約の見直しは、専門家に御相談ください。