一人法務 総務 総務法務を応援―9― 定時株主総会 [後編]
前編に記載したとおり、下記の状態の株式会社を前提として後編も作成しています。
・未上場である
・総務担当者が一人または少人数で法務を兼ねている
・株主が複数名(法人を含む)いる
・取締役会設置
・監査役設置(監査役会は置いていない)
・公開会社でない(=株式の譲渡制限規定がある)
・種類株式を発行していない
・株主総会を適法に開催するなど、遵法を旨としている
・まだ管理部門に十分な人員数が揃っていない
実際には株主総会開催の準備はかなりの業務量とタスク種類の多さです。
ここでは一般的な知識を御紹介しています。
詳しくは当事務所までお問合せください。
その当時、当日ぎりぎりまで作業をしていた代表的な作業は、想定問答集作成でした。
自社の業績以外でも、業界動向、
テレビで話題になっているポイント――2019年であれば働き方改革、
女性の活躍などでしょうか.――に関する質問も多くありました。
某一部上場企業の定時株主総会に行った際に、女性株主が
「いつ、女性が取締役になるのか教えて下さい」とマイクを握りしめて質問していたことがありました。
むろん、どのような質問にも必ず回答するわけではありません。
総会の議場における不合理な質問は、議長の権限で不規則発言として断ることができます。
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さて、取締役会設置会社では「取締役会」が日時、場所、株主総会の目的を決定した上で、
代表取締役が株主総会を招集します。
※今回のコラムでは、書面決議、電磁的記録による“みなし”や、書面交付の例外については触れません。
(1) 招集通知に記載する事項
株主総会招集通知には、下記の事項を記載します。
1. 開催日時と場所
2. 議題
3.「書面議決」または「電磁的方法での議決」を定めた場合にはその旨
4. 会社法施行規則第63条に規定の事項
┗ イ~ヨの15の事項が株主総会の目的ならば、その議案の概要
詳細を知るには、e-Gov法令検索で条文を見ることができます。
(2) 提供書類
招集通知には下記の書類を添付します。
1. 取締役会の承認を受けた計算書類、事業報告、監査報告
2.(書面による議決ができる旨を定めていれば)株主総会参考書類、議決権行使書面
3. 議案の概要(必要な場合)
(3) 決議の種類
以前のコラムでも決議の種類を書きましたが、
決議は定足数、表決数でシンプルに決まるだけでなく、
特殊決議であれば株主の頭数も要素となります。
◇ミニ知識 議決権とは 定足数とは 表決数とは
♣議決権
決議に参加する権利をいいます。
株主総会における議決権数は、原則として1株で1議決権です。
会社法第308条 一株一議決権の法則
但し、議決権制限株式などの例外があります。
♣定足数
有効に議決をするために必要な、最小限度の出席数です。
つまり、定足数以上の出席がなければ、議案に対して可決も否決もできません。
♣表決数
対象になる議題について、個々に賛否を表明することを表決といいます。
議決に必要な表決数とは、議題が賛成承認されるために必要な表決の数をさします。
混同しがちですが「票決」は、“表決”の方法の一つです。
(4) 議事録作成と法定備置書面
会社は株主総会終了後には議事録を作成し、10年間は本店に備置しなくてはいけません。
会社法第318条
議事録には下記の事項を記載します。
会社法施行規則第72条
1. 開催日時、場所
2. 議事の経過の要領及びその結果
3. 法定の事項に係る意見又は発言の内容の概要
4. 出席した取締役、監査役の氏名
♤ 会社法上で取締役、監査役の署名、押印は求められていませんが、
登記申請や議事の真正担保のために押印、特に代表取締役は会社実印を押印しておきます。
5. 議長の氏名
6. 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
次に、議事録だけでなく、備え置きが法定されている書面を確認しましょう。
1. 株主総会議事録
2. 代理権を証明する書面(委任状など)
3. 議決権行使書面
4. その株主総会において改定又は更新、追加されているもの
例:定款、株式取扱規則、株主名簿、株券喪失登録簿、新株予約権原簿、
事業報告、事業報告の附属明細書、計算書類、計算書類の附属明細書、
監査役監査報告、取締役会議事録、会計帳簿・資料、など
(5) 終了後の処理
まだ、担当部署、管理部門としては総会関連業務が完全に終わったわけではありません。
配当決議がなされていれば ⇒ 配当の支払い、
役員の変更等の登記申請の必要があれば ⇒ 2週間以内に変更登記申請
定款変更が生じていれば ⇒ その変更履歴、変更後の定款の管理
など、株主総会の事後処理を行います。
そして次回の総会に向けて、改善すべき点などを検討し記録に残します。
お疲れ様でした。
株主総会は総務にとっての花形業務です。
会社法を初めとする法令、自社の事業内容、業界動向、
国内外の経済を知ることも必要です。
社外専門職や顧問とのチームプレイも大切です。
今後、もう少し深く議事や特例、株式の種類について
コラムにしていきます。