相続法の改正(3) 療養看護による金銭請求、相続の効力の見直し
今回は平成30年7月6日に成立した改正相続法に関しての後編です。
<5> 相続人以外の親族がおこなった療養看護による金銭請求(介護等の貢献)
【特別寄与料の請求権】
改正民法には、特別寄与について「特別寄与料の請求権」が創設されます。
【現行法】
●誰が特別寄与者になれるか: 相続人。
●特別寄与とは: 被相続人の介護などに貢献し、それにより被相続人の財産が維持・増加したこと
●寄与分: 貢献した分を「寄与分」として、遺産分割において相続分にプラスする
┗ 相続人に限定されているため、ベースは相続分。
□ 子の配偶者(e.g. 長男の妻)など、一般的に介護を行う者が対象になっていない。
♠そのため、相続人以外(例えば、長男の妻など)に財産を遺すためには事前に、遺言で遺贈する、養子縁組をしておく、などの準備が必要でした。
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●誰が特別寄与者になれるか: 相続人でない親族(廃除、相続放棄した者等を除く)。
●特別寄与とは: 無償で被相続人の介護などに貢献し、それにより被相続人の財産が維持・増加したこと。
例としては看護、家事、家業手伝いによる労務提供、扶養など。
●寄与分:介護等への貢献分を特別寄与料として自ら請求することが可能。
□ 請求を認定され、相続人全員の合意を得ることにより、特別寄与料を受け取ることができる。
□ 他の相続人と協議が整わない場合には、家庭裁判所に対して処分請求ができる。
♠相続財産全体から特別寄与料が払われることになる、つまり相続財産が減るため、他の相続人との問題になるケースもありそうです。
♠ 貢献を考慮してもらえるように介護をした記録や出費のレシートなどの準備と、日頃から他の相続人と情報共有をしておくべきです。
♠現行制度での「寄与分」と同様に、金額の目安はあるもののその算定は難しく、長期間の係争になるケースも多くあります。その点はあらかじめ理解しておきましょう。
♠現行制度ではカバーしていなかった”実際に長年にわたり介護や扶養をおこなった、子の配偶者“のような典型的な例が特別寄与料を請求できるように法で定められるということは、大きな進歩です。
◇ミニ知識 親族とは 親族の範囲
親族とは、被相続人(亡くなった方)の配偶者、6親等内の血族、及び3親等内の姻族のことをいいます。子の配偶者は、“相続人でない親族”にあたります。
<7> 相続の効力等に関する見直し
不動産、自動車のように、所有者が登記や登録によって公示される財産に関するものです。
そのような財産を、法定相続分を超えて相続した場合の第三者への対抗が変わります。
【現行法】
遺言等によって取得した財産は、登記などの対抗要件が不要である。
そのため、遺言等によって相続した人は登記手続きや登録手続きをする前であっても第三者に取得の事実を主張できます。
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改正法では、遺言等の方法にかかわらず法定相続分を超えて相続した財産は、(不動産登記や自動車の登録など)第三者対抗要件を備えなければならなくなります。
つまり、登記申請や登録をすぐにおこなうことが必要になるのです。
◇ミニ知識 法定相続人とは
相続人が被相続人より先に死亡していた場合には原則として代襲相続されます。
◇ミニ知識 法定相続分とは
法定相続分とは、法律の規定により定められた相続分のことです。
被相続人(亡くなった方)の遺言で、別の相続分を指定することができます。実際には相続人の欠格、廃除、代襲相続の可否、遺留分侵害に対する請求権など様々な法の規定がありますが、それらの指定が無い場合には上記の法定相続分が原則適用されます。
<8> その他
その他にも遺産分割の一部分割、債務の取扱など、多くの改正がなされます。
【施行期日】
改正法は段階的に施行されます。
[原則] 2019年7月1日
[自筆証書遺言の方式緩和] 2019年1月13日
[配偶者居住権等] 2020年4月1日
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特に遺言は、相続発生つまり御本人が亡くなった後に誤りや漏れに気づいたのでは取り返しがつきません。
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