準備は元気なうちに今すべき―2

今回は2つ目の事例です。

<事例B> 一人暮らし
・太郎さん 58歳
 東北地方の出身
 フリーランスのITエンジニアで個人事業主
 若い頃に離婚し、子は居ません。
 両親はすでに死亡し、兄弟はもともと居ません。
 住居は自分で購入した都内のマンション。
 ペットの犬を飼っています。

・太郎さんの資産
 1. 都内の住居マンション
 2. 上場株式 おおよその価額500万円
 3. 定期預金500万円
・太郎さんには糖尿病、高血圧の持病があり、昨年は軽い心筋梗塞で緊急入院もしています。
現在は降圧剤や食餌療法でコントロールしていますが、今後の健康に不安があります。

⇒ 太郎さんの希望
① 延命措置を拒否したい
② 親と死別した子の支援活動をしたい
③ 出身地に先祖の墓はあるが、自分が亡くなってしまうと祭祀が途絶える
④ 別れた妻に資産を遺すつもりはない

■事例B  準備しておくこと■
1. 尊厳死宣言書を公正証書で作成する
  この事例では尊厳死宣言書が必須ですし、公正証書にしておくことが重要です。
2. 遺言と死後事務委任契約
a. 希望する支援活動への寄付やペットの犬が遺された場合の世話について、遺言を作成しましょう。
 この事例では法定相続人がいない「相続人不存在」の状態です。
 そのため、遺言で遺産を受け取る人/法人を指定しておけば、遺留分侵害が生じないで太郎さん本人が希望する受遺者に財産を遺すことができます。
 但し、受遺者の同意は必要です。
(受取らないということもあり得ます)
●支援したい機関を決めておき、そこに遺贈することも可能です。
●負担付き遺贈として、ペットを任せることもできます。

b. 人は、亡くなった後でしなくてはならない事務が多くあります。
 各種支払精算、準確定申告、さまざまな契約の解約、etc.
 特に太郎さんのケースでは自宅マンションを所有しているため、
 太郎さんの死後にも管理費が銀行引落がなされ、部屋は無人で、隣人が不安に思う・・・という事態になりかねません。
 想定される死後の事務を、生前に依頼する人/法人を決めて死後事務委任契約をむすんでおきましょう。
 ※以前のコラムに「相続の注意点」として書いていますので御参照ください。

3. 出身地菩提寺にある先祖代々の墓について検討
 今でもなかなか墓参に行けない距離であり、太郎さんが亡くなった後には祭祀者がいなくなってしまいます。
 選択できる考え方はおおよそ下記のようなものです。
 ① 菩提寺は変えず、今のうちに合祀墓にかえ永代供養を申し込んでおく
 ② 菩提寺から太郎さんの自宅に近い寺院、霊園に改葬する
 ③ 墓じまいをし、手許供養にする
 (その場合、太郎さん本人が亡くなった後は墓に入ることはできない)

 現実には、上記②③のケースでは親族の意向・菩提寺の許可、そして墓じまいの費用が課題となり、手続きに難航することも多く見られます。
 ※改葬や墓じまいの行政手続きは、われわれ行政書士に御相談ください。
 ④ 親戚の若い方などに祭祀を継いでもらうことが可能なケースでは、菩提寺に支払う管理料や維持費のことを早めに取り決めておく。
  遺言との関連に留意することもポイントです。

4. 離婚した妻は法定相続人には含まれませんので、そのままで良いでしょう。

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その方の環境や財産、御希望によって詳細は異なります。
予定される遺産のリスト作成、遺産分割協議の作成、死後事務、相続発生後の手続き一式。
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