小さな会社の総務・法務 会社のハンコ ~デジタル化が進んでも~[前編]
2023年のいま、ハンコを押す場面も減ってきました。
行政書士の専業である、宅建業許可などの各種許認可申請においても書面への押印が格段に少なくなりました。
しかし現在でも「実印+印鑑証明書」のセットにより本人確認をおこなう意義はあります。
会社の総務では書類を多く扱うことから、電子印鑑もハンコもその役割をよく理解しておくことが重要です。
2023年4月に新社会人になった総務担当者の年代では、現在までハンコの重要性を特に意識なさったことがないかもしれません。
今回は小さな会社の総務や法務の担当者に向けて、ハンコの基礎知識を書きます。
後編では電子署名に関する管理規程について社内規程の文例をあげて御説明します。
◇ミニ知識 印章と印鑑とは 法律用語◇
印章・・・ハンコのこと
そのため社内規程は「印章管理規程」という名称にすることが一般的です。
印影・・・ハンコを紙に押したときに付くハンコの跡
印鑑・・・印影と照合してその真否を確認することを目的とし、あらかじめ官公庁(法務局・市町村区など)や取引先に提出しておく印影のこと
いわゆる“実印”
(1) 会社・法人のハンコ 種類
1.代表印の実印
2. 代表印の認印
3. 労務印(主に社会保険手続きに使用する)
4. 銀行印(銀行口座に使用する)
5. 部長之印など一定の権限保有者の印
その他
法人によって揃える印章は異なります。
人数規模が大きい会社では各担当部署が使用するハンコを備えていないと
①すぐに押印できない
②押印した者を特定することが難しい etc.
の問題があるため複数の印章を使い分けています。
多く備える必要がなければ代表印の実印だけを使用してもよいでしょう。
(2) 捨印に注意
捨印は申込書等を作成し署名捺印した後に、軽微な誤りを修正するためにあらかじめ欄外に押印しておくことです。
何をどのように変更されてしまうか、捨印を押すタイミングでは不明なため、契約書や協議書に安易に押印しないよう御留意ください。
一般的には申込書、争いの無い議事録、委任状などで使われるものです。
重要な文書に訂正箇所がみつかったときには、当該箇所に二重線を引いて修正し訂正印を押します。
(3) 印鑑証明書以外の本人確認
一般的に日本では「実印+印鑑証明書」という制度が利用されていますが、諸外国では同様の制度や習慣がないという国が多数あります。
海外取引で利用できる本人確認のための署名制度の主なものです。
1. 反復して海外との取引を行なっている事業では商工会議所の扱う「サイン証明」を利用している会社もあります。
2. 海外在住の日本国民であれば、その地にある日本の領事作成の「署名証明」
3. 上記で領事館が近くにないときは現地の公証人が作成した「署名証明」