家族信託~親亡きあと 2023年 この子はどうして生きていくか

この10年ほどで終活の認識が高まって来たのは非常に有用なことです。
近しい家族のない単身者や、メンタルの問題で仕事に出て行けない人が多く存在することも隠さなくて良いケースが多い時代になりました。

一言で終活と言っても、その段階や法的な行為か事実上の行為かなど、整理することができます。

<自分で始める終活>

・エンディング・ノート(又はそれに準ずるもの)の作成
┗ 知らせてほしい相手・自分の資産・葬儀はどうしてほしいか etc.
  自分の希望を明確にしておきましょう。
  書籍店などで売っている市販のエンディング・ノートを利用すると、書くべき項目がすでに印刷されているので作成しやすいようです。
  ※いざというときにエンディング・ノート自体を読んで実行してくれる人がポイント。

・葬儀社などへの生前の会員加入
┗ こちらも、会員になっている葬儀社へ連絡してくれる人がポイントです。

・自筆遺言を作成し、保管制度を利用して法務局で保管する
┗ 遺言の内容は法的有効性の確認のために、予め専門家に依頼する方が良いでしょう。

今回は、信託の中で一般に「親亡き後信託」と言われる、
障害等のある子のための信託(福祉型信託)について考えてみます。
むろん子に限らず、配偶者や兄弟亡き後など、家族が先だってしまった障害のある人の支援のためという意味合いです。
障害等があり、両親や家族が亡くなった後に自分で生計を立てる/毎日の生活を一人でしていくこと、つまり自立が難しい場合。

<専門家と一緒にする終活>

・遺言
・任意後見契約
・死後事務委任
・信託契約 etc.

◇ミニ知識  財産管理 と 身上監護◇
成年後見人の職務は大きく二つに分かれます。
財産管理・・・財産を管理すること。
これにより、まとまった資産から、毎月の生活費を本人(被後見人)に渡すこともできます。
身上監護・・・被後見人の生活や療養のための法律行為をおこなうこと。
これにより施設との契約、入院手続き、看護する人との契約や住居確保等ができます。

[障害のある家族のために活用できる制度の例]

1. 負担付遺贈
2. 遺言
3. 成年後見(任意後見契約)
4. 家族信託/福祉信託
5. 死後事務委任
6. 見守り
どれもできることの限界・長所と短所があるため、状況によって複数制度を併用する等、慎重に検討する必要があります。

◇ミニ知識  商事信託 と 民事信託◇
商事信託・・・信託銀行や信託企業が受託する信託。
生命保険を利用するなどいろいろな方法があります。
専門機関に依頼するため安心できますが、かなりの額の報酬がかかります。
民事信託・・・家族や親族等が受託する信託。
「家族信託」や「個人信託」は民事信託の中の類型です。
課税の問題、信託財産や受託者の権限設定などが複雑なため、信託構成は専門家に依頼しましょう。
信託財産の種類により、登記や登録により信託内容が公示され、第三者に公開されることも注意点です。

親が亡くなったあとに、信頼してその子を託せる人物がいるか

信託の受託者として、又は後見人として信頼できる、そして引き受けてくれる人物がいることが大前提。
大前提であり、個人的には最大のハードルと考えます。
将来的に遺される障害のある家族を、
・信頼して任せることができる
・年齢も本人と同じ年代か又はもっと若い
・資金管理や各種手続きという実務を正しく行う(正しい相手に相談できる)スキルがある
・そして、その役割を引き受けてくれる人
上記のような適任者が居ないときはどうするのか、現時点での大きな課題です。

何をするにも親(家族)が元気なうちに準備すること
それぞれの手続きをする家族が元気なうちに準備しなくては、遺された障害のある本人は行為能力が制限され、自分では有効に法律行為をおこなえません。

家庭環境や親族構成、財産の種類などにより、最善の方法はそれぞれです。
することが多くありますが、あきらめず、いま家族のためにできることを考えましょう。