一人法務 総務 総務法務を応援-22-  ひな形 サンプル 文例「不可抗力免責条項」

ひな形 サンプル集 文例 「不可抗力免責条項」

2020年3月、日本でもコロナウイルス感染拡大が続いています。
経済への打撃もリーマンショック以上と予想され、
観光業などダイレクトに売上が激減する業種もありますが、
それ以外の業種においても影響が出ている企業、事業主は多くあるはずです。
例えば
・部品が輸入できないので製品が完成しない
・資材が無いため建築物が完成しない、
・感染予防のため、契約したイベントを開催できない、
・従業員が出勤できず役務を提供できない、

契約の種類は売買契約、業務委託、請負契約、その他さまざまですが、
締結済みの契約で定められた債務の履行が
“コロナウイルス感染症が原因で”行えない/遅滞する場合に
「債務不履行」によって損害賠償責任などが生じるのでしょうか。

◇ミニ知識  債務とは 債務不履行とは
債   務:今回のコラムでの「債務」とは、
      自社(または事業主自身)が他者に対して、契約でさだめた
      特定の行為(商品納入、委託された業務の完成、etc. )をする義務。
債 務 者:この場合において自社の側。
債務不履行:債務者が、合意した趣旨・目的どおりに正しく債務を履行しないこと。
       三類型に分類される。
履行遅滞:債務不履行の1つの類型。
履行不能:債務不履行の2つめの類型。
     履行することが事実上不可能な状態。
     e.g. 納品するはずのアンティーク商品が焼失した。
不完全履行:債務不履行の3つめの類型。
      履行はしたが、契約等で合意した趣旨・目的と合致しておらず、
      完全な履行ではないこと。

【債務不履行の効果】

履行を受ける側(≒買手等の顧客サイド)では、次の請求が可能です。
・履行が可能なときは強制履行を求める
・損害賠償請求する
・契約解除する

自社が今回のコロナウイルス感染拡大がもとで債務不履行になってしまい、
【うちの会社が損害賠償請求を受けるのか】
という点について、ポイントです。

(1) 契約書に 「不可抗力免責条項」が記載されているか

◇ミニ知識  不可抗力免責条項とは
不可抗力とは:
取引上普通に要求される程度の注意や予防方法を講じてもなお
防止できない損害を発生させる事由であり、
戦争、内乱、大災害などをいう。
 例えば、商品輸入の契約があったが内乱が起きた、
販売契約後にその建物が地震で倒壊した、etc.
 契約締結時には予想し得なかった事態であり、契約当事者の力では
コントロール不可能な事態が生じた場合に、この条項に依って損害賠償請求、
契約解除などの責任を負う事を免れるための規定。
つまりリスクを軽減するもの。
※金銭債務の履行遅滞による責任については、
民法第419条第3項に、不可抗力であっても免責を認めないと規定されています。

第1のポイントは、契約に不可抗力免責事項が記載されているか、
の確認です。
仮に記載が無い場合でも、事情によっては
当事者間の話し合いなどで解決できることもありますので、
実際に問題が生じていれば専門家に相談してみましょう。

(2) その事由が「不可抗力」に該当するか

実際にそのアクシデントが、当該契約行為に対して
「不可抗力」に該当するか、という点が2番目のポイントです。
記載があったとして、文言そのものを確認します。

(3) その不可抗力と債務不履行とに因果関係があるか

当該ケースでも不可抗力に該当するとして、
債務不履行と因果関係があることを具体的に立証します。
例えば、中国からの予定資材がコロナウイルスの影響で入ってこなくとも、
代替になる同等の資材を仕入れることができた、
仕入価格が高いものであれば購入できた、などの場合では、
因果関係について立証が難しく、法的な争いになるおそれもあります。

※実際には帰責性の判断にはその他の要因があり、
加えて危険負担の規定など複数の法や事情が関係します。
事情によっては話し合うことで納期を延ばすなどの変更も考えられます。

コロナウイルス感染防止策を実施しながらの業務遂行は
精神的にも大変なストレスですが
皆様の御健康をお祈りしております。