パワハラ対策法的義務 中小企業も2022年から適用
相談を受けた会社がすべき対応
「パワハラ防止法」と呼ばれている法の正式名称は
「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)」
大企業には2020年からすでに適用施行、
中小企業への適用も本年2022年6月1日と迫っています。
第30条の2、及び3が新設されました。
【参考】厚生労働省告示第5号(いわゆる「パワハラ指針」)
令和2年1月15日公表
パワーハラスメントの第一の問題はその行為がパワハラに該当するのか、という判断が難しい点です。
ことに2020年からは新入社員の導入研修もほとんどがオンライン実施という企業も増えました。
学生にも同様のことが言えますが、コロナ以前の“普通の新入社員時代”という実体験が無い層です。
上司の側も今まで異なる新人教育の手段をとらざるを得ず、苦慮なさっている会社もおありではないでしょうか。
コミュニケーション手段のほとんどがオンラインという関係は真意が伝わりにくく、対面と比べて難しいものです。
上司(又は同僚等)からすると新入社員に指導をしているだけの認識でも、
周囲の社員の人柄を知る機会が少ない新入社員からすると「ハラスメントだ!」となるおそれがあります。
【参考】厚生労働省 あかるい職場応援団
このサイトは小さな会社の総務、人事の方にも役立つ情報が多く載せられています。
「ハラスメント基本情報」のページに、パワハラの類型だけでなく裁判例等も載っていますのでお役立て下さい。
パワハラの相談を受けた会社がすべき対応
会社が相談に対してすぐに対応しなくては問題が大きくなり、会社が損害賠償責任を負うこともあります。
(0) 対応部署や担当者をあらかじめ決めておく
パワハラを受けたと感じた社員が相談先に迷うものです。
また、相談発生後に直ちに対応にかかるためにも相談の受入部署・担当者を定めておきます。
(1) ヒアリング
まず相談者から、相手との関係などを聞き取ります。
① 具体的な言動を時系列で
② 相談者が会社に希望する対応
③ 匿名を希望するか
④ 相談を受けている担当部署との連絡に関する留意点があれば聞いておく
相手からのヒアリング、周囲へのヒアリングは、相談者の希望する匿名性等に配慮しながら行います。
会社に相談した事実をもって相談者に更に不利益が生じるのでは、本末転倒です。
(2) その他の資料
メール、紙資料、写真などの客観的な資料は、事実の確認のために重要です。
それらの資料も対応部署で預かります。
(3) 記録と確認
ヒアリングの内容は必ず記録にとり、その都度の日時を記載します。
また、作成後の記録は誤りがないか、本人に確認をしてもらい、誤りが無い旨の署名等をもらっておきます。
その後の処分等については個々のケースにより、就業規則・前例・法令に拠って判断することになりますが、基本的な会社のアクションとして初動が遅れないよう十分な準備をなさって下さい。
【参考】社会福祉法人ファミーユ高知事件 (高知地裁 令3.5.21判決)
弁護士等の3名による第三者委員会の調査報告書において認定されたパワーハラスメントを理由とし、会社が懲戒解雇を行ったがその懲戒解雇は無効とされた判決です。
速報を読みましたが、懲戒事由の該当性・パワハラ行為の客観的な証拠・解雇通知書の記載内容等が十分でなかったようで、裁判所がパワハラ行為と認定していません。
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