一人法務 総務 総務法務を応援―11― SNSによるリスクの防止
この数年で、社員によるSNSへの投稿で生じる企業のリスクが急激に高まっています。
バイトテロはもちろんのこと、業務上の機密や個人情報を漏洩させる、
または企業には無関係の内容であっても
「○○会社の社員」の投稿であれば社会からの非難が会社に向けられるおそれがあります。
【主な類型】
1. 顧客等のプライバシー侵害、個人情報の曝露:
飲食店や不動産業者の従業員が、来店した顧客(有名人、一般人とも)の
氏名・画像・注文(依頼)内容などを投稿する。
ひどい場合には、有名人のクレジットカードの利用控までをアップ。
名誉毀損に該当する場合もある。
2. いわゆるバイトテロ:
食材をゴミ箱に投げ込んでから調理する等の動画を投稿する。
日本蕎麦店で大学生アルバイトが洗浄機に入った画像をアップした件では、
その蕎麦店は閉店、破産に追い込まれる結果になった。
3. 事業上の情報を漏洩:
企業にとって資産価値のある情報、
機密情報を投稿する。
自社の事業上の資産価値への損害のみならず、
知的財産権侵害、
機密保持の合意をしている第三者からの損害賠償など。
4. その他:
公式アカウント、非公式であっても
会社の部署を明示したアカウントにおいての発言は、
社外からは会社のオフィシャルな発言と認識される。
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どの類型であっても、損害賠償、風評被害、
社会的信頼の喪失、それに加えて
使用者責任が生じるおそれがあります。
上場企業であれば株価にも影響するでしょう。
社内従業員だけでなく社外の人が投稿したSNSの内容が
たとえ真実でなくとも損害を受けることもあるのが現実です。
◇ミニ知識 使用者責任とは
事業のために人を使用する者が、その人が
事業の執行について第三者に損害を与えた場合に負う
損害賠償責任のことをいいます。
参考<民法 第七百十五条>
(使用者等の責任)
ある事業のために他人を使用する者は、
被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について
相当の注意をしたとき、
又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、
この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 省略
【受ける影響】
SNSへの投稿は、拡散の範囲、スピードが
紙媒体とは比べ物になりません。
投稿後に削除したとしても、閲覧した人、
保存した人による拡散の全てを削除することは不可能です。
特に画像や動画には、多くの情報が一度に認識され、
記憶に残り、その内容が真実であると思われやすい、
という効果があります。
・従業員の行った不法行為に関する使用者責任
・直接的な事業上の損害
・損害賠償請求
・社会的信頼の失墜
・広報での対応
・事件後の長期間にわたる係争
・etc.
不法行為を実行したのは従業員だとしても、
企業の従業員管理、安全管理体制が不十分であった
(又は全く構築していなかった)として非難を受け、
損害賠償請求を受けるような事態はできる限り予防しなくてはなりません。
【予防策 規程と教育】
(1) SNS使用規程
┗ 就業規則と紐づける
┗ 個人情報保護規程、機密管理規程、会社が貸与するPC、
スマートフォン、タブレット等の情報端末利用規程(どれも仮称)とも整合させる。
(2) 教育・研修
┗ 適正な利用方法を従業員に理解してもらうため、
教育研修は不可欠。
(3) 誓約書
┗ 教育研修の内容を理解し、責任をもって行動してもらうために
誓約書を提出してもらうことも効果的。
(4) 体制整備:
┗ 公式アカウントの担当者による発信でも、
事前のチェック体制を整備することも。
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当事務所では社内規程整備の際に、付属する帳票類、リストなど
一式を作成し、現実的な運用に役立つよう努めています。