消費者の法律 個人の法律 消費者契約法の一部改正 後編 【消費者の立場から】
消費者契約法の一部改正 後編 【消費者の立場から】
平成30年6月15日公布の消費者契約法の改正法が本年(令和1年)6月15日に施行されます。
平成28年にも改正が行われていますが、さらに消費者保護の目的で行われるものです。
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消費者契約法の一部改正 後編 【消費者の立場から】
今回は消費者(個人)の視点から、改正の概要についての説明です。
<改正の背景>
①一般の消費者と事業者では、専門的な知識に大きなへだたりがある
②交渉力の格差
③それに加え、被害事例
目的はさらなる“消費者の保護”です。
【ここに注意! 消費者契約法でいう“消費者”とは誰か】
◇ミニ知識 消費者とは
消費者契約法上の「消費者」とは
“事業のために又は事業として、契約する個人”のことを言います。
会社や法人は当然ながら該当しませんが、誤解しやすいのは
“個人事業主”や個人事業主として届出をしていないが事業をしている個人は、
消費者という定義に該当しません。
自宅でケーキ教室を個人で開いている等の行為も事業にあたりますので、
ケーキ教室の運営のための契約については、
消費者契約法に基づいて保護されることはありません。
◇ミニ知識 事業とは
消費者契約法における「事業」の定義では営利目的かどうかは無関係です。
反復して継続して行う同種の行為のことを指します。
◇ミニ知識 個人事業の開業届
所得税法第229条により、事業所得を生ずべき事業を開始した場合には
1ヶ月以内に管轄税務署に開業届を提出することが定められています。
現実には罰則が無いために
開業届を出していないままという例も多いようですが、
事業所得があれば納税義務が生じます。
納税すべき状態で長年にわたり税申告をしていない、
つまり脱税をしている状態であれば、
小規模な個人事業であっても悪質とみなされるおそれがあります。
軽い気持ちで放置することはリスクの高い行為です。
◇ミニ知識 消費者契約とは
上記の定義による個人が事業者とむすぶ契約のことです。
【消費者として、この法によりどのように保護されるか】
(1)取り消しうる不当な勧誘行為
事業者のする勧誘のうち、取消しができる類型が改正により増えます。
1. 困惑類型
① 不安をあおる告知
「このセミナーを受けないと、いつまでも就職できないですよ」など。
2022年から成年年齢が引き下げられ、
18歳でも有効に契約を結ぶことができる
イコール 年齢を理由にして取り消すことができない、
ということになります。
社会経験の少ない若い人達が悪徳商法のターゲットにならないように
この改正内容を理解しておくとよいでしょう。
②人間関係の濫用
いわゆるデート商法など
③判断力の低下の不当な利用
加齢などで判断力が低くなっていることにつけこんだ勧誘。
「これに投資すればすぐに大儲けができ、老後はずっと安心」など。
④霊感等による知見を用いた告知
だいぶ以前にも問題になりました。
「この壺を買って飾らないと、孫が事故にあう」など。
⑤契約前に債務の内容を実施
消費者が注文する前に、勝手に
「我々は呼ばれて来たのだから、出張費を支払え」など。
(2) 不利益事実を伝えない
本来ならば、契約前に消費者に説明しなければならない
商品やサービスに関するマイナスの点を、故意に説明しないケース。
特に不動産売買で大きな問題になることが多いパターンです。
(3) 不当条項
①消費者の後見等を理由とする契約解除
成年後見等の審判を受けたことだけを理由として、
事業者サイドから契約解除ができることを契約の内容としているケース。
例えば、住居の賃貸借契約において
一般の人と変わらずに社会生活ができるにもかかわらず、
この契約条項によって解約されてしまうような事態は、
そもそも個人を守るための制度である成年後見制度の意義に反します。
②事業者が自らの責任を決める条項
こちらは、前編を御参照ください。
(4) 事業者の努力義務
こちらも前編を御参照ください。
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この改正法は本年(令和元年)6月15日から施行されます。
実際には上記の内容に詳細な要件がありますし、
その他の改正点もあります。
この数年、携帯電話も使っていないような高齢者に対し
80万円もするウィルス対策ソフトを売りつけるなど、
グレーゾーンを利用した卑劣な商法も増加しています。
すでに契約を済ませていても、
困ったときには泣き寝入りする前に、
各地にある消費者生活センターに相談するようにして下さい。
消費者ホットライン『電話番号188』・・・各地の消費者センターを案内してくれます。
使い方は消費者庁のサイトへ。