キーパーソン 「遺言執行者」とは ~誰が遺言を実行してくれる~

令和2年(2020年)から法務局による自筆遺言保管制度が開始され、遺言の方式についての意識が行き渡るようになったと思います。

遺言の方式については以前のコラムにも書きましたが、「遺言執行者」の重要性がまだ理解されていないように感じます。
遺言の方式はいくつかありますが、一般的な方式を大きく分けると「自筆遺言」「公正証書遺言」の2種類があります。

どの方式で遺言を作成しても、いざというときのキーパーソンは「遺言執行者」です。
せっかく作成した遺言でも、危惧されるのは自分が死亡後に次のような事態になることでしょう。
1. 遺言が発見されないままになる
2. 遺言をみつけた人が廃棄してしまう/改竄する
3. 遺言そのものは発見されたが、相続人等のなかに遺言を実行できる人がいない
  (例:高齢、疾病等で事務手続きができない。手続き事務が苦手。)

◇ミニ知識 「遺言執行者」とは◇
2023年4月現在
その名称のとおり「遺言執行を行う者」のことで、一般的には遺言者が遺言のなかで指定しておきます。
重要な役割のため、その義務が民法で定められています。
根拠となる条文は民法第4節(遺言の執行)です。
「遺言執行者」に就任した人には次の義務が発生します。
♦ その任務を開始した(=遺言を実行する)ときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
♦ 遅滞なく、相続財産の目録を作成して相続人に交付しなければならない。
♦ 遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
♦「委任」の条文が適用されます。
   注意義務
   報告
   受取物の引渡し等
   金銭の消費についての責任
   費用等の償還請求等
遺言執行者となることができないのは未成年等。
複数の者が遺言執行者となることや、法人も遺言執行者になることができます。
また遺言で指定されていても必ず就任しなくてはならないわけではなく、遺言者の死亡後に就任を断ることもできます。

 

つまり、遺言を作成しただけでは、たとえそれが公正証書遺言であっても、自動的に遺言の内容が実行されるわけではありません。
遺言の内容をきちんと実行できる人に、あらかじめ遺言を作成することや遺言の方式、遺言執行者に就任してほしい旨を伝えておくことで、自分が亡くなった後に自分の希望が実現されます。
そのため、信頼できる、事務手続きのできる人を選んでおくことがポイントです。
安心して最期を迎えたいものです。

われわれ行政書士や、弁護士が遺言の中で遺言執行者に指定されることも一般的です。
専門家であれば相続発生後の手続きに慣れており、遺産分割協議書の作成などもスムーズです。
遺言執行は遺産の受け渡しだけではなく、 子の認知、団体等への寄付、
相続人の廃除やその取消し、 財団法人設立、信託行為など多岐にわたることがあり、煩雑でストレスになりがちです。

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