2022年 お墓を買うべきか 買わないべきか
高齢化・少子化の進む日本で、家族にまつわる問題の一つにお墓があります。
※本コラムは仏教の御家族を仮定して書いています。
(1)先祖代々の墓があるが、自分の住まいから遠方であるため何年間も行っていない。
先祖の供養を続けたいがどうしたらいいのか?
(2)兄が先祖代々の墓を承継しているが、自分の家族には墓がない。
高額なため、買うべきか悩んでいる。
(3)姉妹はどちらも結婚して夫の家の墓に入ることになりそう。
実家の墓を誰が受け継いで管理していくのか。 自分達は分骨するのか。
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高齢化により祭祀承継者がいなくなってしまう御家族も多くなりました。
お寺でも家族が存在していないと思われる墓(管理費用が支払われず、誰にも連絡がつかない)でもいきなり合祀せず、何年か待った後に合祀するお寺が多いようで、寺院の側にも負担が増えています。
少し前に京都新聞に「集落の墓地を丸ごと墓じまい 住民ら決断」という記事がありました。
居住者のほとんどが高齢者になり、近くの寺が設けた合祀塔墓にお骨を移して今後の法要管理を行っていくそうです。
記事を読むと、遠方の親族全員に連絡がとれたこと・集落のお寺が引き受けたこと・住民の合意を得られたこと等の要件がうまく満たされたからこそ実現できた合祀のようでした。
(1)先祖代々の墓があるが、自分の住まいから遠方であるため何年間も行っていない。
先祖の供養を続けたいがどうしたらいいのか?
<改葬>
「自分の住まいから離れた県に実家の墓があり、今後も自分が祭祀継承者として管理していきたいので、住まいの近くの墓にお骨を移したい。」
というケースでは改葬をします。
♦改葬の基本的な手順
1.新しいお墓を決める
2.新しいお墓と永代使用契約等をむすび「墓地使用許可証」(名称はさまざまです)を受け取る
3.同時に「受入証明書」を発行してもらう
4.現在のお墓の管理者から「埋葬証明書」を発行してもらう
5.現在のお墓の所在地の市区町村役所へ「改葬許可申請書」を提出する
┗ 申請書用紙は役所により様式が異なります。
┗ 申請書に「現在の墓地管理者」が記載署名する欄があります。
6.役所から「改葬許可証」が発行される
7.現在のお墓から遺骨を引取る
┗ このときにお墓の魂抜きの供養をする場合もあります。
┗ 墓石を処分し元の更地に戻してから今の墓地の管理者(菩提寺等)へ返還する
8.新しいお墓へ納骨する
┗ このときに開眼供養をする場合もあります。
【参考】 墓地、埋葬等に関する法律
第五条 埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない。
現在のお墓がある菩提寺との交渉が難航することがあります。
お寺により事情はさまざまですが、檀家から支払われる年間の管理料(一般的に年間で約3万~6万円)によって、お坊さん・寺務が生計をたて、寺全体の維持管理をおこなうのです。
よほど観光客からの収入でもないかぎり、檀家の減少は大きな痛手です。
そのため、菩提寺から離檀料として金銭(妥当な金額~多額までさまざま)要求をされるケースもあります。
(2)兄が先祖代々の墓を承継しているが、自分の家族には墓がない。
高額なため、買うべきか悩んでいる。
<お墓の値段>
必要になる費用は墓石代だけではありません。
① 墓石代金
② 永代使用料/年間管理料等の墓地料金
┗ 霊園/寺院墓地のどちらか、地域性等でその金額は大きく異なります。
公営墓地は比較的低めの料金の傾向があります。
また、上記(1)にあるように、いったん建立した墓を自分が亡くなった後も子供たちが代々受け継いでいけるのかも検討要素になるでしょう。
一家の墓以外の供養のしかた
<手許供養・自宅安置>
お墓に遺骨を埋葬せず、遺骨の一部や全部を自宅等で保管して供養する方法です。
【参考】 墓地、埋葬等に関する法律
第二条 1項~4項省略
5 この法律で「墓地」とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事(市又は特別区にあっては、市長又は区長。以下同じ。)の許可を受けた区域をいう。
第四条 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
2 火葬は、火葬場以外の施設でこれを行つてはならない。
法の趣旨は犯罪防止及び公衆衛生と思われますが、つまり遺骨を埋蔵せず自宅で保管することは違法ではありません。
注意点
1. 現実的に、保管しているうちに遺骨にカビがはえるおそれがある。
2. 遺骨を捨てる、又は庭など墓地以外に埋めるのは法律違反。
最近は手許供養として、墓に遺骨をおさめてもその一部を気に入った器等に入れて手許に置くことも増えてきたようです。検索すると美しい器が売られています。
<散骨・合祀墓>
故人の希望により散骨する場合の留意点があります。
散骨はどこでも勝手にできるわけではありません。
専門業者のするように遺骨とわからないようにパウダー状等にすること、
水源地や漁業権がない海域などを選び、管理者や行政機関にその場所で散骨をすることが可能か、事前に確認しましょう。
(3)姉妹はどちらも結婚して夫の家の墓に入ることになりそう。
実家の墓を誰が受け継いで管理していくのか。 自分達は分骨するのか。
<両家墓>
複数の家の墓を「一つの区画に建立する」又は「一つの墓石に複数の家名を刻み」遺骨を埋葬します。
他にも、費用の点から考えると合祀墓も一つの方法です。
承継する子や孫が居なければ永代供養墓を選ぶこともできます。
遺言と同様に、「まだ若いから放っておいて大丈夫」ということは絶対とは言えません。
遺言、相続、自分のエンディングは、自身の希望を明確にしておきましょう。
御家族のいらっしゃる方はよく話し合うことをお勧めします。
具体的な方法は専門家に御相談ください。
改葬許可申請も承ります。
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