民法と不動産登記法 相続登記の義務化

今回は以前のコラムで少し触れた「不動産の相続登記の義務化」について書きます。
「相続登記の義務化」という単語だけお聞きになって、一般の方がビックリなさるかもしれませんが、2021年10月の今すぐ、というスケジュールではありませんのでその点は御安心ください。

2021年4月21日「民法等の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立しました。
その目的は次の両面です。
 a. 所有者不明土地の発生予防
  ┗ 不動産の相続登記をしないケースが増えています。
     道を歩けば多く見かけるようになった廃屋は、近隣への害も懸念されます。
 b. 土地利用の円滑化
  ┗ 地域発展のため鉄道を通す・整備された宅地にする、etc.の土地利用がスムーズに進むことも目的です。

地域開発のための鉄道敷設には土地所有者が明確であることが必要です。

むろん相続によって複雑な共有関係になってしまった不動産等の共有物の管理・利用~処分、改正民法による明確化など前段階での要素は多くあります。

 

(1) 相続登記等の申請の義務付け と 登記手続きの簡略化

◊施行日
相続登記の申請の義務化関係の改正
・・・公布(令和3年4月28日)後3年以内の政令で定める日。
令和6年(2024年)が目安か。
◊対象
不動産の所有者が亡くなりその不動産を相続・遺贈により取得した者。
施行日前に生じた相続も対象になる。
◊概要
a. 取得を知ってから3年以内に相続登記を申請しなくてはならない。
b. 現在の所有権移転登記よりも簡単な「相続人申告登記」手続きが創設される。

「相続人申告登記」かなりの譲歩と感じました。
第1項にある申出を行えば相続登記の義務を履行したとみなされ、『所有権登記の付記』として登記されます。
但し、その後に遺産分割が行われて所有権を取得したときにあらためて申請義務が生じます。

【参考】新 不動産登記法
第76条の3(相続人である旨の申出等)
前条第1項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。
2 前条第一項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第1項に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。
3 登記官は、第一項の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる。
4 第一項の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前条第一項前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

c. 遺贈による所有権移転登記の手続きが簡略化される。
 ┗ 令和4年の税制改正で登録免許税(2021年10月現在の相続登記は1000分の4)に関しても措置を検討する。
  2021年4月からすでに行なわれている免税措置もあります。
  相続登記の登録免許税の免税措置について 法務局

◊義務に違反すると
 改正後の不動産登記法第164条1項により「正当な理由なしに申請を怠ったときは10万円以下の過料」

(2) 氏名/名称、住所の変更があったときの変更登記申請の義務付け

現行法では所有者等が氏名/名称または住所の変更があったときの変更登記は義務ではありません。
◊現在の問題
  例えば所有権の登記名義人が死亡→相続発生→相続人が移転を繰り返す、こうなると相続人の人数も複数になり、中に所在不明の相続人も生じます。
  その不動産に関する権利者が不明のため、処分も活用もできない不動産になるという問題が急増しています。

◊変更登記の義務
  所有権の登記名義人に限定し、変更があった日から2年以内に変更登記申請の義務が定められます。
◊義務を怠ると
  正当な理由なく申請義務を怠ると5万円以下の過料
◊施行日
住所等変更登記の申請の義務化関係の改正
・・・公布後5年以内の政令で定める日
◊手続きの円滑化のため法人登記システムと連携させ、登記官が登記名義人の名称、住所変更の情報を取得し、不動産登記に反映させる手段が設けられます。

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