スタートアップ企業・小規模企業・同族会社の株主 後編
(3) 家族経営の企業と相続
同族会社の中でも家族経営の企業は会社組織であるという意識が薄くなりがちです。また、株式と相続の関係も特に留意すべきでしょう。
例えば夫婦とその長男で始めた株式会社。
順調に事業拡大を続けていれば売上規模も大きくなり、従業員を雇用することになります。多くの法令適用を受け、ステークホルダーも株主、顧客、従業員、そして消費者、取引先、地域社会と広がっていきます。世代交代につれて事業方針の意見がわかれることも考えられます。
早い時期から、企業としての意思決定のルール(社内規程)を明確にし、その結論を取締役(会)や株主総会の議事録として保管するようにすることが重要です。
株式非公開の会社においては、定款で取締役の任期を10年に伸長している場合が多く、変更登記が頻繁に発生しないことから議事録作成・保管が正しく行われていない事例を多く見ます。
♦ミニ知識
最後の登記から12年を経過している株式会社は、休眠会社の整理作業として法務局からの通知の後に登記や届出をしない場合に、「みなし解散」の職権登記が行われます。
家族経営であっても会社は会社です。
関連する法令を早くから意識して経営することが長く継続する秘訣かもしれません。
相続との関連では、家族の中で株式保有者が他界した場合にその法定相続人が相続するのか、会社を承継する親族が相続するのか等、事前に準備をしておく点が複数あります。会社の利益が大きくなり株式の価値が上がれば争いのタネになりがちですし、税金面も考慮する必要が生じます。その時になって困らないように早めの準備をなさるべきでしょう。
最近では中小企業の「事業承継」が日本全体の大きな問題になっています。それに伴い、平成30年度の税制改革で支援措置がなされました。その他にも中小企業庁では中小企業の事業承継に対して、様々な支援をしています。
民間でもM&Aマッチングサイトが多くありますので、事業規模に合った承継の方法を考えるきっかけに覗いてみては如何でしょうか。